でもまあ、今尾さんの鍋のような、
「質がよくて高いもの」はこの御時世
売れなくなってきてるのでは?


「銅」というもの自体の価値観が変わったって
いう面もあるから。
僕らは「銅…だから何」ていう時代に生きとるやろ。
でも昔の人は素材見て「こりゃ−いいもんやないか」
っていう感覚があったんよ。
屑鉄屋がいてさ、取っとけば、
また後で金になるというやつ。
でも今は買ったら後は「捨てる」という選択肢
しか残って無いようで、
だからホームセンターで「使うもの」として、
買うことだけで足りるんよね。
まあ素材に対してとか
ものに対してとかの価値観が、今は違う方向に
いっている気はするなあ。
情報とか、流行とか、目に見えないものには
敏感なんだけど、目に見えるもの、
「そこにあるもの」に対しては感覚がものすごく
鈍いんじゃない。
こんな仕事(鍛金)に関しても、
「どう思うんだろ?」て不安なこともあるよ。



でもこうやって、しみじみ鍋を眺めていると、
僕は「さすがにこれは捨てないでしょ」と思うんですけど。


でもね、時代の中で「必要条件」を満たしてないものは
いらなくなってきてるのは間違いないしね。
そうそう、これね、電気調理器ではつかえんのよ。
なんか電気を通すメッキとかをしないといけないらしくて。
だから今の時代に合わせて銅が生き残るには
「シンクのごみ受けの殺菌作用」とか
「花が長生きする」とかそんなことを言わんといけんのよ。
なんか寂しいなあと思うんやけどね。