そういった面では今の日本の文化的な
美意識の低下も気になるところでは
ありませんか?

私は、美意識とは「自己」というものを
確立したいという気持ちだと思うんですよ。
誇り、「矜持(きょうじ)」という言い方をしますね。
誇りを持つこと、自己の確立というものが、
すなわち美意識なのだと思いますね。
「恥の文化」という言葉がありますけれども、
私は「最近の若い人は」などということは
言いたくないのですが、まあ地べたに座るとか、
電車で化粧するとか、いろいろありますね。
それで「どうしてそれが悪いの?」と
開き直ったりしています。でも実は、
「人に見られて恥ずかしい」というのではなく、
「自分に対して恥ずかしい」というのが、
「恥の文化」なんですね。
武士道の徳目のなかに「廉恥(れんち)」という
ものがあります。正義とか、勇気、名誉を
重んじるというのと同じで
「自分はそんな風になりたくない」
「自分に対して恥ずかしい」という気持ちが
すなわち自分に対する誇りを持つという
ことなんですね。
ですから、向上心というか、誇りを持つことが
美意識や、あらゆる面で作用してくる
のではないかと思いますよ。

美のことでいえば、先生は書、画も
大変お上手ですよね。

いえ、決してうまくはありませんし、書道家の
先生方の様に上手な字を書くことはできませんが
「武道家らしい字」を書きたいと思ってますよ。
それも先ほどの話と同じことで、「自分が恥ずかしく
ない書」をを書きたいと思うことからきてますね。
それに居合にしても書にしても絵にしても
自らの中でふつふつと湧き上がってくるものを
自分が表現する。それがやりたいという気持ちと
そこに向かう努力が大切なのだと思いますね。
やはり「美意識」というものは大きな要素でして、
たとえば昔の武将の装束とか大変派手ですね。
しかし華美だけれども下品じゃない。
それも自分の美意識の高い表現から
くるものだと思うんですよ。