さて、その鍛造の製品とは別に、サインや
モニュメントといった、いわば現代的なものも
多くつくってますよね。製品としては全然
別のものに見えるのですが。

いや、本当は何でも一緒なんだよ。
デザインの方から話せば、
いいかたち、いいものっていうのは
その様式が違うだけで、本質は変わらない。
きれいなかたち、きれいな色っていうのは
自然界の中にあって、それをどれだけ
表現しなおすかっていうことなんだよな。
それと、製作の面からいえば、うちの連中は
みんな「どれだけ誠実に、人のために、
人に喜ばれるようにつくるか」ということを
心がけているから、製作の内容は違っても
付けるだけじゃない、きれいな溶接をするし、
「常に、いいものをつくる気持ちがある」
というだけなんだよ。
その「ものづくりとして当たり前のこと」がさ、
きっと今は利益優先主義に追われちゃって、
できていないところが多いんじゃないかな。
だからうちは東京や埼玉といった、
中央の仕事が多いんだと思うよ。

やはり代表作は沖縄の平和祈念公園の
平和の丘モニュメントですよね。

そうだね。でもモニュメントっていうのはその
「人のため」っていうのが実はもっとも
大きく関わってくるべきものでさ、この
沖縄の摩文仁の丘っていうのはね、
沖縄戦のときに最も激しい
戦闘のあった地区で、「ガマ」っていう
鍾乳洞の中に人が隠れて、赤ちゃんの
泣き声で気づかれないように口をふさいで
窒息死させたなんていう悲しい出来事が
たくさんあったところなんだよ。
だから本当はあの上のアーチはそんなに
重要じゃなくってね、その場所と歴史の
ためのものとしては、ガマの持つ悲しみと
その奥に差し込む希望の光のほうが
大切だったんだ。
だからね、モニュメントっていうのは
本来なら、作家一人のイメージで
つくられるべきものではなく、その土地や、
歴史、そうしてそこに住む人たちの想いを
僕らものづくりの人間が受けとめて
再構築してやるものなんじゃないかと思うんだよ。