僕はね、作家って言われるのが嫌いなの。
何か自分のわがままでつくってるひとも
多いでしょ。それよりも鎚絵という名前で、
人のためになるものを提供していくという
姿勢でいたいよね。

そういった考え方は建築にも反映されてますよね。

そうね。建築っていうのは、やっぱりその
人がその時間をこれからずっと過ごすものだから、
本当はもっとちゃんとその人の好みや
欲しいものを汲んでやる必要があると思うんだよ。
でも今の住宅はほとんど既製品でさ、
カタログの中から選ぶしかないっていうのは
かわいそうだと思うよね。
それに、建築はね、本当はカタログで選ぶ
建材の部分じゃなくって、空間の演出が
一番大切なんだよ。それをカタログで
ひとつひとつ選んで寄せ集めて建てる
もんだから、いろんな様式がごちゃまぜになってる
好みのわからない空間になっちゃうんだよね。

最近はまた、民間工事にも力を入れてますよね。

君がやってるからね。まあまだまだ
思うようにはいってないみたいだけどな。もちろん
公共工事ほど額は大きくないし、みんな自分の
身銭を切って支払うわけだから大変なんだけど、
お客さんの顔が見えるっていうのはやっぱりいいよな。
この間なんか表札をつくってあげたら、
「こんないいものつくってもらってうれしい」て
お客さんが泣き出しちゃったんだよ。
人に喜ばれることが
仕事になるっていうのはこんな嬉しいことはないな。
まだ実現できていないんだけど、実は
今度からは鎚絵の製品には鎚絵のマークと
保証書をつけようと思ってるんだよ。
保証書っていうのはね、メンテナンスはもちろん、
「もしいらなくなったら引き取りますよ」ていう
ものなんだけどね。