それはまたどういった理由で。

僕はね、やっぱり今の資本主義経済に疑問を
感じるんだよ。大量に作る、大量に消費する。
そうやってみんな「お金を使わないといけない」
という強迫観念を植え付けられているんじゃ
ないかと思うんだよね。
でも本当はさ、僕の田舎なんか、いくと
いまだにゆっくり時間が流れてて、月に
何千円かの出費で楽しく暮らしているんだよね。
だから、我々ものづくりの商売ももっと
長いスパンで使えるものを提供して、
ずっと大切にしてもらおうという試みなの。
それにさ、たとえば店舗なんかで
我々が一所懸命つくって、何年も町の景色の
一部としてあったものが、取り壊されることで、
一緒にごみになっていくのって悲しいじゃないか。
最近はさ、環境問題が深刻になって、
みんな3RだISOだ言ってるけど、我々は
「そろそろ捨てないものをつくろうじゃないか」てね、
循環しなくていい、そのものがそのかたちで
大切にされてとどまっていくものを
つくっていきたいし、それが鎚絵なりの
取り組みだと思っているんだ。

さてこれからの鎚絵の展開は。

それは君たちが考えることだろ。
実は僕自身は会社の規模をこれ以上
大きくすることは望んでないんだよ。
本当は儲けようと思ったら、同じものを
誰にでもつくれる形でずっと作ったほうがいいんだよ。
でも、やっぱり、その時々に対応して、
柔軟に何でもつくれるところが鎚絵の
いいところだからな。まあ経営として
儲からない理由もその「なんでもつくる」
ところにあるんだけれど。
ただ、うちの連中一人ひとりが仕事ごとに
ディレクターというか、トップになって、
鎚絵の感覚を共有できる人たちと
仕事量を増やしていけたらとは思っているよ。